断熱性能を表すUA値
パッシブデザインの要素の1つである断熱についてお話したいと思います。
断熱は、パッシブデザインの自然の力を利用するにあたっての基盤をつくることだと思っています。
断熱性能を表す数値として、現在はUA値(外皮平均熱貫流率)で表されます。
UA値とは住宅内部から外部へ逃げる熱を屋根や壁、床等の外皮面積で割った値です。
UA値が小さいほど、断熱性能が高いと言えます。
断熱性能を求めるにあたっては、
間取り、断熱材、断熱材の厚み、サッシの種類、
庇の長さ、サッシの取り付け高さ、ガラスの種類や外皮面積等
たくさんの要素で家全体の断熱性能が決まってきます。
断熱材で断熱性能が決まるわけではない!
私も接客をさせて頂くことが多く、お客様からお伺いするお話の中で、
「○○工務店の断熱は、硬質ウレタンフォームで断熱性能は安心出来るけど、御社はどうですか?」
と質問されることがあります。
「ちなみに、その工務店さんは硬質ウレタンフォームを何mm吹付けていらっしゃるのですか?」
をおたずねすると、
「・・・。わかりません。」
と答えられます。
断熱材の名称だけを聞いて安心していらっしゃるようでした。
確かに、熱伝導率だけの比較ですと、数値の小さい方が熱を通しにくい材料だということになります。
下記は、よく使われている断熱材の熱伝導率ですが、
吹付硬質ウレタンフォーム(現場発泡品) 0.026
高性能グラスウール32K 0.035
住宅用ロックウール断熱材 0.038
とあり、吹付硬質ウレタンフォームは、
この3つの中では最も熱伝導率の値が小さいので、材料として性能は優れていることになりますが、
気密性は取れるものの、火には弱い性質もあります。
断熱材の厚みで逆転?
熱伝導率をもとに、熱抵抗値という部位の熱の通りづらさを表す数値を求めることができます。
単位は(㎡K/W)です。
熱抵抗値は、大きいほど熱が通りづらいことを表します。
同じ材料でもその厚さが変われば、熱の通りづらさは変わります。
たとえば、同じ断熱材でも厚さが厚くなれば、その分断熱性能は高まります。
熱抵抗値は、熱伝導率と厚さから計算で求めます。
熱抵抗値 = 厚さ ÷ 熱伝導率
厚さの単位は(m)、熱伝導率の単位は(W/mK)、熱抵抗値の単位は(㎡K/W)です。
例えば、硬質ウレタンフォーム(現場発泡)を60mm施工した場合、
0.06÷0.026=2.30
高性能グラスウール32kを90mm施工した場合、
0.09÷0.035=2.57
住宅用ロックウールを105mm施工した場合、
0.105÷0.038=2.76
となり、厚みによって、逆転劇が起こるということになります。
上記にも記載しましたが、家の断熱性能は断熱材だけで決められるのではありません。
断熱材の種類にもメリットやデメリットがありますので、把握するとともに、
しっかりと施工の厚みも確認する必要があります。
高性能グラスウールやロックウールは気密性が弱いので、
別途費用が掛かることが一般的ですが、気密工事をすると気密性がぐっとアップします。
さらに言うと、吹付硬質ウレタンフォームは、屋根面に施工しますし、
高性能グラスウールやロックウールは天井面で断熱しますので、外皮面積が異なります。
最終的には外皮計算をしないと、実際の断熱性能は何とも言えないのです。
長い説明になってしまいましたが、お伝えしたいのは、
断熱材の種類だけで家の性能を判断するのは大変危険だということです。
基本的には、どんな断熱材でもきちんと施工する技術と適した厚みを確保すれば良いですし、
UA値は家全体の断熱性能ですので、部分的に比較してもしょうがないことなのです。
家づくりのパートナー選びは?
まだまだUA値を求める計算が出来る会社は少ないと言います。
もし、会社選びをする場合、本当に性能や住まい心地を大事にしている会社や工務店の選び方は
「UA値の計算が出来ますか?」
と営業マンや設計士に直接聞くことです。
もちろん、「はい。」としっかりお答えしていただき、
お話をしていただける会社がきちんとこれからの住宅に向き合っていこうとしている会社だと思います。
愛知県で建てる家に必要な断熱性能は?
2020年に国が新築における断熱性能基準を定める予定でしたが、見送られることとなりました。
しかし、これから家を建てられる方は、将来を見据えた断熱性能で家は建てた方が良いでしょう。
では、どの程度の断熱性能を担保していくことが良いかですが、
愛知県は、6地域に該当しますので、
現在の最低基準である外皮性能基準がUA値0.87を満たす設計にするのはもちろん、
ZEH基準であるUA値0.6、さらにはヒート20が提唱しているG1グレード UA値0.56、
さらに上のG2グレード UA値0.46 を目指していくと、
快適性も高まり、さらには将来必要な光熱費も少なくなりますので、
体感・実感ができるメリットが大きいです。
想定する暖房時間としては、深夜や早朝を除く在室時間は暖房をする前提として、
G1グレードで、冬期室温が体感温度で概ね10℃を下回らない。
G2グレードで、冬期室温が体感温度で概ね13℃を下回らない。とあります。
ただ、性能をよくしようとすれば、コストが掛かります。
コストを掛ければさらに断熱性能も良くなりますが、
愛知県という比較的温暖な地域では、室温がこの程度担保されていれば、
更にハイグレードなUA値0.28というような多雪地域の超高性能の家までは必要ないのでは?
と考えます。
付加断熱が必要になりますし、費用対効果が見合っていない点や
もしそこまで性能をUPさせることが出来る費用に余裕がある方は、
住宅設備や仕様等に予算を使っていただいたほうが住み心地やメンテナンス性、使い勝手がUPします。
何事にも家づくりはバランスが大事だと思います。
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